マーケボン Vol.2

a young boy riding a bike down a dirt road

※読売新聞社の刊行物に連載した書評のアーカイブです。
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マーケボン
(2009年6・7月号)

Vol.2 : 初めて自転車に乗れた、あの感覚
『青空人生相談所』(橋本治/ちくま文庫)

広告やマーケティングの講義をやれ、という依頼を頂戴することが増えてきた。広告の仕事を始めて、はや20年、私の経験が少しでも若い人の役に立てば、と時間が許す限り引き受けるようにしている。

よい講義とはどんなものだろう。私が目標にするのは、聞く人にとって「初めて自転車に乗れた時のような感覚」を味わってもらえるような講義だ。細かなハウツーではなく、「あ、マーケティングって、そういうことだったのか」という大きな直観を持ち帰ってもらえたらと思って喋っている。

広告の仕事を始めた頃は、他人の思いつかないユニークな企画を考えてやろうと、とにかく気負っていた。その割には、どこかで見たような企画だったり、あるいは奇抜すぎて良いのか悪いのか判断つかない実現性の無い企画しか出てこない。どうやったら独創的な企画を思いつくことができるんだろう、やっぱり才能なのかなあ、と周囲の優秀な先輩方の企画を見て気ばかり焦っていた。

そんな時、一冊の本に救われる。「青空人生相談所」(橋本治著/ちくま文庫)。作家の橋本治が雑誌で連載した人生相談を集成したもので、読者から寄せられる相談に対する回答の見事さに驚嘆した。独創的、かつ的確。私が得たのは「ある相談に対する回答のオリジナリティーというのは、その相談をどういう問題として把握するかにかかっている」という大きな直観だった。

ユニークな問題把握ができれば、解決策は必然的にユニークなものになる。表層的で凡庸な問題把握からは、それなり以上の解決策は導出されない。独創的な企画を考えるということは、つまり問題を独創的なカタチで把握するということだ。あ、自転車に乗れたぞ、という感覚、私の場合はこれだった。(了)

私が子供の頃を過ごしたのは岐阜県の山の中、自転車の練習は田んぼの畦道、泳ぎの練習は川だった。矢野顕子の「CHILDREN IN THE SUMMER」(アルバム『LOVE IS HERE』収録)を聴くと、日が暮れるまで外で遊んだ夏の日を思い出す。

LOVE IS HERE

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